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NEET論(マクロ経済編)

NEETの議論が続いていますが、話をバブル崩壊直後に戻してみましょう。

バブル崩壊の時に盛んに語られたことに、
「資産をいたずらに肥大化させることはやめよう」
といったことがあります。バブルは株や土地など資産価値の際限ない肥大化によって拡大しました。これはいわば、ダイエーのような「拡大主義的経営」とでも形容できるような経営手法の成れの果ての姿であり、これに対する反省として、特に日経新聞のような新保守主義派によって主張されました。この経営理論は、企業が資産、負債、資本、収益、費用を単に拡大させるのは無意味であり、むしろ、1株あたりの利益率(EPS)や株主資本利益率(ROE)などを向上させることを目的とする「株主重視経営」を行うべきだ、というものです。これにより、企業は資産の圧縮を図り、例えば「本社ビルの売却(最近では三菱自動車がモルガン・スタンレー関連会社に売却しました)」やM&Aの活発化などがそうです。この流れの中で、「最小の費用で最大の利益を上げること」が企業の大きな課題となり、その費用の中で大きな比重を占める人件費が削減の対象となったのです。この結果、1990年代から今まで、労働環境の大幅な悪化が生じています。サービス残業やボーナスカット、給与の伸び悩み、終身雇用時代の終焉、成果主義という名の給与総額の削減などです。さらに、中途雇用におけるハードルも非常に高くなっています。技術や経験がない人間など会社にとっては単なる費用の増大でしかない、ぐらいに企業は考えています。

さらに、バブル崩壊後の政策の失敗によりデフレが長期化し、税収が落ち込み、赤字国債を乱発し、これによる財政悪化を立て直すため公共事業も削減せざるを得なくなっています。

このように見てみると、NEETの増大は、もちろん本人の責任も大きいでしょうが、日本社会全体の経済環境が生み出した「時代の落とし子」といえるのではないでしょうか。

また、一つ指摘しておきたいのは、サービス残業などによって、日本社会において「労働の価値」が非常に減少している気がします。デフレによって「貨幣価値」が増大しているんだからチャラかも知れないですが、もしそうなら、労働をせずに家で金のかからない遊びをする、という人が増えるのは必然といえるかもしれません。
by reko_pietro_msx | 2004-12-25 13:48 | 政治
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