不安の正体

切込隊長のブログに、people moving toという、「漠然とした不安」についての考察がありました。むしろ、「日本社会の変容」が主題のようでもありますが。

僕は心理学には疎いのですが、僕の思うところでは、「不安」という観念は
1.問題の原因が分からない
2.原因は分かるが問題の対処法が分からない
3・問題自体がハッキリしない
4.現時点で問題はないが、今後恐ろしいことが起こる気がする
といった場合に沸き起こる感情であるといえるでしょう。

例えば、優秀なアマチュアテニスプレーヤーがいたとして、彼が経験する不安は、

1.自分がどうしたらプロになれるのか、何が足りないのかという不安
2.自分には瞬発力が足りないということを自分で自覚してはいるが、それを伸ばすトレーニング法がわからない。あるいは、自分が行っている練習で本当にプロになれるか分からない
3.なぜかいつも同じライバルに負けてしまう、自分は勝てる自信があるのにいつも大きな大会には勝てない、という望ましい結果が出ないことへの不安
4.順調にレベルアップはしているが、将来的に重大な怪我や故障でテニス人生が終わってしまうのではないか、あるいはそもそも、自分が本当にこの道に進んでいいものか、勉学に励んで普通に進学した方がリスクの少ない選択なのではないか、といった不安

などが考えられます。

では、多くの日本人が感じる「漠然とした不安」とはなんでしょうか。

僕は、1の「問題の原因が分からない」や、3の「問題自体がハッキリしない」ではないような気がします。大抵の人は、その不安自体は分かっているはずです。それは、
「将来の生活不安」端的に言うと「将来的に可処分所得(disposable income)が減少し、つつましい生活を強いられるのではないか」という不安です。
◎今現在、戦争の危機が迫っていると考える人は少数でしょう--将来の危機に備えて軍備を整備しなければならないとか、国際社会やアメリカからより大きな貢献を求められるとか、つまり軍事費の増大を予測する人は多いでしょうが。
◎今現在、日本社会が極めて危険で無秩序な社会であると考える人は少ないでしょう--将来的にそうならないように様々な施策を施すべきと考える人は多いでしょうが
◎今現在、年金が本当に破綻すると考える人は少数でしょう--破綻しないために、増税して税金を投入したり、国民皆保険をあきらめる必要に迫られるのではないかと考える人は多いでしょうが
◎少子化ですぐに国力が減少し貧しい国家になると考える人は少数でしょう--少子化が進めば少ない人数で多くの老人を支えることになるのは避けられない、移民を受け入れれば治安はさらに悪化するのでは、と考えている人は多いでしょうが
◎いつまでも景気が回復しないと考える人は少ないでしょう--むしろ、景気が回復したように見えても税収が増えない、誰もが景気回復の恩恵を享受できるのではなく、勝ち組負け組みのハッキリした社会になると考える人は増えているでしょうが
◎日本がすぐに国際社会における地位が低下し、資金が日本に全く入ってこなくなり、中国やインドの台頭によって没落してしまう、と考える人は少ないでしょう--もしアメリカとの関係が上手く行かなくなれば、このようなこともあり得ると考える人は多いでしょうが
◎道州制や「地方分権」がすぐに良くない結果を招くと考えている人は少ないでしょう--将来的に、地方格差がますます拡大し、現在すでに危機的状況にある地方自治体の財政難がさらに深刻化し、「地方税」の大幅な増税があり得ると考える人は多いでしょうが

このように見ると、すべて、国民は問題の所在を明確に認識しているのです。そして、その問題のすべては、先に書いた「可処分所得の減少」につながっています。国民負担率の際限ない増大や、負け組みとなってしまうことへの恐れ、つまり2の「原因は分かるが対処法が分からない」が「漠然とした不安」の正体なんでしょう。
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by reko_pietro_msx | 2005-01-03 03:04 | 政治
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